駄農園さま

こういうお茶を
求めていたんだ。
強く大地を
感じる。

ひとくち飲んだ瞬間、「お茶です!」という、むきだしの自然の味が正面からぶつかってくる感覚。駄農園さんの飾らないまっすぐな想い、仕事がなせる術だと思う。

ーお茶を飲んで幸せになってもらいたい―

体にすんなりと入る、体が求めるお茶づくりを目指している駄農園さん。茶葉の持つ力を存分に生かすために、農薬を使わず有機肥料で栽培し、形状をまっすぐに整える精揉工程は行わない「よんこん」製法でお茶をつくっています。

現在、駄農園を切り盛りしているのは、3代目・髙塚貞夫さん。東京農業大学で知り合った奥様の朋子さんと一緒に、祖父・吾郎さんの代から続いてきた茶畑を継承。お茶はもちろんですが、“駄農園”という名前もインパクトがあり記憶に残ります。

その由来は、初代の吾郎さんが友人から「お前は駄農だな」と言われるほど、経営を顧みず、茶の研究に没頭したからとのこと。祖父・吾郎さんの熱い想いに敬意と感謝を込めて、今でも駄農園という名前を大切に、お茶づくりをされています。

3年前に一つの転機がありました。茶農園にとって主流である茶問屋への卸しをやめ、自分たちの手で仕上げから出荷までを行うようになったそう。茶問屋さんが欲しいお茶と、自分たちがつくりたいお茶との間にズレが生じてくる中で、「自分達で作ったお茶を自分達で販売していこう」という決断をされました。

茶畑の前にある作業場には、何十年と使用され続け、様々な人の手を越えてここにやってきた百戦錬磨の機械たちがずらりと並んでいます。貞夫さんの丁寧なメンテナンスを受けながら、現役バリバリの機械たちは、今日も髙塚さん夫婦と一緒に“体にすんなりと入る、体が求める”お茶を仕上げています。

目の前に広がる広大な牧之原の茶畑のそばで、おふたりが淹れてくれたこだわりのお茶。思わず目を閉じて深呼吸。大地の味が、体の隅々に広がってパワーを注いでくれているような感覚でした。マスコットキャラクターの可愛らしいウサギちゃんは、娘さんによるものだそう。

駄農園さんの温もりそのものである「特蒸しよんこん茶」。日常の中で、ふとした瞬間、人間らしく自然体でいることの大切さに気づかせてくれるような一杯です。このお茶に出会った人たちの、かけがえのない存在になっていくのは、きっと間違いない。貞夫さんご夫婦が淹れてくださった一杯を見つめながら、そんなふうに思えました。

鈴の茶より、感謝を込めて。