父から娘へ。
馬見原で紡ぐ
岩永製茶園の
釜炒り茶。
かつては宿場町だったという、熊本県・馬見原の石畳の道を進み、2022年にオープンしたばかりだというJUGAAD BROS DOUGHNUTSさんでほっと一息。もちろん、ドーナツのお供は、岩永製茶園さんのアイスティです。
JUGAAD BROS DOUGHNUTSさんを出てすぐ、石畳の道の裏手に岩永製茶園さんはあります。戸を開けて驚くのは、川沿いに大きく広がる茶園の景色。ご自宅のサンルームの窓には、まるで風景画のように切り取られます。両国橋を挟んだすぐ対岸は宮崎県で、「こんにちは」と挨拶をすれば届いてしまいそうなほどに近い県境です。
丁寧に手入れされ整備された茶畑の様子に感動していると、「今日は写真撮りたいかなと思って、朝早く草取りしたのよ」と生産者の門内智子さんが優しく出迎えてくださいます。週末に行われる夏の風物詩、馬見原 火伏地蔵祭に向けて今日も準備に大忙しの中、茶園と工場を案内していただきました。水害にも負けず守り続けてきた100年在来や、たった2畝のみの希少品種である岩永1号を見学させていただき、紡いできた歴史を感じます。
岩永製茶園さんのお茶の中でも、私が特に大好きなのが、紅茶のラインナップです。どこの国でどんな風に作られているのかわからない輸入紅茶を飲む中で、安心安全で、生産者の顔が見える国産紅茶を作りたいという門内さんの思いから、生産が始まりました。
当初は自分と知人友人に配る程度だったのが、美味しい!という周りの後押しもあり、紅茶作りに本腰を入れて販売するように。釜炒り茶の製茶に使っていた古い揉捻機が、元々は紅茶製茶用の揉捻機だったということが発覚した時は、その巡り合わせに鳥肌が立ったと言います。
先代のお父様が亡くなり、40代で茶園を継いだ門内さん。幼い頃から父の背中を見て、茶作りを手伝い続けていたこともあり、いつのまにか1人で全ての工程をこなせるようになっていたと言います。2022年のお父様の命日、朝早く鳴った携帯が本場イギリスでの名門品評会THE LEAFIES 受賞を知らせました。岩永1号の和紅茶部門での優秀賞。お父様が在来品種を選抜し、挿し木をして育てて始めた2畝の岩永1号を、門内さんが受け継ぎ、和紅茶に仕上げた大切なお茶です。「やるなら、きちんと」というお父様の言葉を胸に、今日も馬見原で美味しいお茶が仕上がります。
鈴の茶より、感謝を込めて。